沖縄は4度目だ。
今回の旅の目的は、のちほど述べたい。
まずは観光(というか街を放浪)的な話から。
県庁近くのホテルをチェックアウトして、県立博物館・美術館へ行こうと思い立つ。
ゆいレール(モノレール)の高架に沿って歩いていくと、鬱蒼とした緑の塊りのような場所があった。
崇元寺公園である。
その塊りはガジュマルの巨木だった。
(那覇市の崇元寺公園にあるガジュマル。「都市景観資源」に指定されている。)
さらにズンズン進んでいくと県立博物館・美術館に着いた。
開館まで少し時間がある。
近くのマックでコーヒーを片手に、Google Map を検索しているうちに、守礼門という文字に気持ちが動いた。
懐かしい。
切手収集に、それこそ全身全霊をかけていた子どものころ、琉球政府発行の記念切手の値段がとても高かった記憶がある。
投機の対象になったこともあったかもしれない。
守礼門をデザインした切手がその代表格である。
博物館・美術館はもういいや、守礼門へ行くしかない、と思った。
マックから歩いて45分くらいで着けそうだった。
何も知らなかったが、守礼門は首里城に通じる道の手前にあるらしい。
ともかく、Google Map を頼りに、首里城方面に向かえばいい。
那覇はけっこう坂道が多い。
首里城に通じる坂道を登りきる途中に、首里観音堂というのがあった。
門の脇で密生しているカンノンチクの緑に目を奪われた。
自分の実家にも鉢植えのカンノンチクがあったっけ。
(首里観音堂のカンノンチク。「観音竹」の名称はここが発祥という。)
坂道をさらに進むと守礼門に到達。
あたりは、観光客、とくに中国からの団体ツアー客(のみ?)で大いに賑わっていた。
守礼門を越えれば、もう首里城である。
城の無料見学エリアだけを散策したが、朱塗りの立派な建物があちこちに。
世界文化遺産というだけのことはある。
(世界文化遺産・首里城から海をのぞむ。)
さて、ここからが本題である。
沖縄訪問の目的は、「私宅監置施設の保存に関する懇談会」に出席するためであった。
ヤンバルの私宅監置小屋を残していくために、関係者がさまざまな取り組みをしているのだが、その経過報告と今後について話し合うという会である。
その会場へは、首里城から再び徒歩。
坂道を下り、サトウキビの畑道も抜けて、50分くらいは歩いたか。
数年前にその私宅監置小屋の存在を知ったときの衝撃は、いまでも忘れられない。
その建築物としての価値は計り知れないが、保存には多くの課題があり、壊されてしまう可能性も高い。
そういう危機感が関係者の間にはあり、それがこの会合の開催につながった、と私は認識している。
会合の知らせを受けて、あわてて航空券を手配し、まさに「居ても立っても居られず、沖縄」に来たというわけである。
関係者からの報告やフリーディスカッションが3時間以上は続いた。
「負の遺産」などという言葉はいくらでも思いつくし、首里城以上に世界文化遺産にふさわしいと確信しているが、地元の住民や家族の立場を思うと、事情もよくわかっていない「ヤマト」の人間の私が、あれこれ言う立場にはない…と寡黙になるしかなかった。
これから、どのようにこの問題が展開していくのか、精神医療史の研究者の立場から見守っていきたいと思う。