近代日本精神医療史研究会

Society for Research on the History of Psychiatry in Modern Japan
JSAA-ICJLE 2009 International Conference(2009年度豪州日本研究大会・日本語教育国際研究大会)
2009年7月13日〜16日にシドニーで、2009年度豪州日本研究大会・日本語教育国際研究大会(JSAA-ICJLE2009)が開催されます。「JSAA-ICJLE2009は、豪州日本研究学会 と各国の日本語教育関連学会を一堂に集結するもので、オセアニア地域初の画期的な研究大会」ということです(詳細はhttp://www.jsaa.info/)。

当研究会のメンバー3人がこの大会でパネル発表をします。ドイツ・ウルム大学のThomas Mueller氏には、chair/discussantとして加わってもらいました。このほどパネル採択の通知が来ましたので、その内容を簡単にお知らせします。関心のある方はご参加ください。

Title of Panel: Japanese Modernity and Folk Therapy for the Mentally Ill
Panel Topic: History
Language of Presentation: English

Panel Brief Description :
In 1868, the newly-formed central government of the Meiji Restoration decided to adopt Western medicine. Elite students were sent to Europe to study medicine, and on their return to Japan took up important posts such as university professors and government officials. These ‘enlightened’ doctors, involved in the spread of the new medicine, also suppressed traditional remedies or reinterpreted them to be more compatible with Western medicine. In this panel, the modern history of medicine in Japan, in particular psychiatry, will be discussed from the viewpoint of specialists and lay people dealing with the Westernization of indigenous medicinal practices.

Chair/discussant: Thomas MUELLER (University of Ulm)
Presenter 1: Akira HASHIMOTO (Aichi Prefectural University)
Title: Folk Therapy for the Mentally Ill in Modern Japan: Their Rise and Fall
Presenter 2: Osamu NAKAMURA (Osaka Prefecture University)
Title: Family Care of Mentally Ill Patients in Iwakura, Kyoto, Japan
Presenter 3: Kazuko ITAHARA (Osaka University of Health and Sports Science Junior College)
Title: Traditional Treatment for Mental Patients at Buddhist Temples in Chiba, Japan

| おしらせ | 15:01 | comments(0) | - | pookmark |
第28回日本社会精神医学会に参加して
 昨年のこのブログで、第28回日本社会精神医学会について紹介し、精神医療史というセッション(全部で3セッション、合わせて9演題)が立ち上がったことをお知らせした。その学会が、つい先日の2009年2月27日(金)・28日(土)に栃木県総合文化センターで開催された。自分も参加し、そこで発表もしている。なので、なかなか公正な立場で感想などを書くこともできないのだが、あえて印象に残ったことをコメントしておきたい。

 精神医療史を専攻している立場からみると、まだまだ日本の精神医療の歴史への理解や検証が一般に足りないと感じた。それは、演題の内容からというより、フロアからの質問・コメントから伺われる。
 一例をあげたい。精神病者の滝治療でよく知られ、これまでにもいくつかの関連論文が出されている兵庫県の岩龍寺(これは、当地の精神病院建設につながってくる)に関する発表があった。そのなかで、天皇行幸と精神病院建設との関係が触れられていた。
 これに対して、「天皇行幸と、精神病患者の収容との関係が喧伝されることが多いが、これは果たして事実なのか。“都市伝説”のようなものではないのか」といった主旨の質問があった。しかし、一つの演題ごとに、8分発表、4分質疑、という時間的にきびしい設定のためか、この点について満足のいく議論に達し得なかったように思う。そのため、この問題は曖昧のまま、聴衆には「精神医療史の研究レベルは、その程度のものだろう」という印象だけが残ったかもしれない。
 当然ながら、(昭和10年代の)天皇行幸と、精神病患者収容(と精神病院建設)、これはもちろん“都市伝説”などではなく、歴史的な事実である。それは、各地の県レベルの図書館などに必ず所蔵されているであろう、天皇の行幸記録をみれば普通に書かれていることだ。
 これは、氷山の一角だと思う。多くの人には、極めて不十分な知識しか供給されておらず、それを補う「妄想的」な先入観が自己増殖し、日本の精神医療史に関する通俗的な理解が蔓延している。

 ともかく、精神医療史は、現在と近未来の精神医療を批判的にとらえる(いつの時代にも完全なシステムはありえないという意味で、常に批判的な検証が欠かせないだろう)ための豊富な素材を提供するものである。このセッションを通じて、そんな思いを新たにした。
| フリートーク | 09:29 | comments(0) | - | pookmark |
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