近代日本精神医療史研究会

Society for Research on the History of Psychiatry in Modern Japan
『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を読もう(その12)


 なおも監置室の続き。

第十九例 (続き)
室内ニハ畳三枚ト一畳ノ四分ノ一程ノ小畳一枚トヲ敷キ、蒲団・敷布各一枚・枕一箇ヲ入レアリ。入浴ハ四日目一回、掃除ハ一週一回、洗濯ハ一箇月四回。運動ナシ。


 説明にあるように板張りの一部に畳が敷いてある。その他、寝具も入れてあるようだ。入浴は4日に1回、掃除は週1回などだが、当時の庶民の平均的な生活と比較してどうなのか、いいのか、悪いのか、即断はできない。
| 資料解題 | 12:10 | comments(0) | - | pookmark |
『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を読もう(その11)


 まだまだ監置室の記述は続く。今度は記述と挿入図をもとに、あらたに監置室の平面図(上から見た図)を作成してみた。

第十九例 (続き)
室ノ西南隅ニ幅二尺・長サ四尺ノ板張アリテ、其中央ニ幅七寸・長サ一尺二寸ノ排便口アリ。床下ニハ瓶ヲ埋置シ時々掃除ス。採光・換気不良ナリ。


 板張りの床の一部が排便口になっていることがわかる。また、監置室の南側は戸袋で閉じてられており、光が入るのは、ほとんど西側の格子部分だけなので、監置室の中は当然暗いわけである。
| 資料解題 | 22:20 | comments(0) | - | pookmark |
『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を読もう(その10)


 監置室の記述はさらに続く。今度は先回紹介した東側の格子とは反対で、西側の壁の様子が書かれている。

第十九例 (続き)
西側北寄一間ハ壁ナルガ南寄一間ニハ一寸五分角材、間隔二寸ニテ幅一寸五分・厚サ三分ノ横貫四本ヲ有スル格子戸ヲ嵌メ込メアリ。格子戸ノ内側ニ障子二枚ヲ具ヘ、更ニ内側ニ板戸ヲ抽出(ひきだ)スベキ溝アリ。


 西側の壁の北より半分は壁で、残りは格子である。写真はこの西側の格子部分を写したもの。記述のとおり4本の横貫が確認できる。この写真の撮影地点を赤字で示せば上のようになるだろう。
| 資料解題 | 22:06 | comments(0) | - | pookmark |
『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を読もう(その9)


 監置室の記述はまだ終わらない。“『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を読もう(その8)”からつづいている説明にしたがって模式図をつくった(↑)。格子戸を3つ描いてある。横に5本の棒を通してみた。

第十九例 (続き)
 其第一段ノ横貫ト之ニ接スル柱トハ各輪釘ヲ有シ之ヲ細キ麻縄ニテ結ビタリ。中央ノ格子戸ノ北寄ニ三尺ノ高サニ五寸ニ七寸ノ食物差入口アリ。鴨居ハ幅三寸・高サ五寸ニシテ、奥座敷ノ天井ハ土蔵ノ屋根ニ差掛ケ作レルヲ以テ傾斜シ居リ、天井ト鴨居トノ間隔ハ廣キ所ニテハ一尺五寸ニ及ブ。


 つまり、一番左の格子戸は、スライドするわけだが、この一番上の横棒には輪釘があって、麻縄で柱と結びつけてある。真中の格子戸には食物差入れ口があり、天井は北側の土蔵との間に作られた斜めの差掛けになっている。鴨居との最大距離が1尺5寸、約45センチである。
| 資料解題 | 20:45 | comments(0) | - | pookmark |
『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を読もう(その8)

第十九例 (続き)
監置室ハ居宅ト土蔵トヲ連ヌル奥座敷ノ一部ニシテ四坪ノ廣サアリ。北側ハ土蔵ノ壁ニ接シ、南側ハ戸袋ノ裏ニ當リ壁ニテ劃セラル。東側ニハ幅一尺五寸・厚サ一寸・間隔一寸五分ニテ幅一寸・厚サ三分ノ横貫五本ヲ有スル格子戸三本アリ。其中北寄ノ二本ハ同ジ敷居ノ溝ニ立テ付ケアレドモ、南寄ハ一本ハ之ニ隣ル溝ニ嵌メアリテ開閉シ得ベシ。


 ここでは監置室の構造が述べられている。第19例に限らず、もっとも多くの記述を割いているのは、ほとんど場合、監置室であることに注意したい。第19例では写真も2枚添付されており、上の写真がその1枚である。
 縁側があって、手前(南側だが)の白っぽくみえる戸袋のすぐ奥が監置室になっているようである。しかし、この写真では暗くて内部までは見えない。この戸袋に直角に格子戸が3つ連なっていて、そのうち2つは固定され、残りの一つはスライドするようである。格子戸にはそれぞれ5本の横棒(横貫)が通してある。
| 資料解題 | 11:42 | comments(0) | - | pookmark |
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