近代日本精神医療史研究会

Society for Research on the History of Psychiatry in Modern Japan
<< 第17 回日本精神医学史学会開催のお知らせ | main | 『名古屋の精神医学史 戦後編1』 その5 <新シリーズ・小林靖彦資料 49> >>
「瘋癲人御霊代を柞原社より賀来社へ持ち帰る」

私宅監置資料でお世話になった、NPO法人・大分県近現代資料調査センターの野田武志さんから資料のコピーをいただいた。
『神社編纂』(明治6年)という綴りの中から、「瘋癲人御霊代を柞原社より賀来社へ持ち帰る」という一連の文書を見つけたという。
それによると、

ある男が、瘋癲人である妻とともに、病気回復のお礼のために賀来(かく)神社に参籠していた。
すると、秘かに妻はそこを抜けだして、柞原(ゆすはら)八幡宮に行き、ご神体を賀来神社に持ち帰ってしまった。

柞原八幡宮は大分市にある神社である。
一方、賀来神社(ここで検索)は、本社である柞原八幡宮の摂社という関係。
秋期大祭(9月1日〜11日)の間のみ、平時は柞原八幡宮に鎮座している武内宿穪命(たけうちすくねのみこと)が賀来神社に帰ってくる。

件の妻が、ご神体を持ち帰ったのが5月なので、当然ながら大祭の時期ではない。
しかし、時期外れに「武内宿穪命が帰って来た」というので、これ幸いと附近の住民が参拝に押し寄せた。
おもしろいのは、殺到する参拝者を見た賀来神社が、大分県令に5日間の臨時の祭典(不時祭典)を願い出ていることである。
だが、願いは聞き入れられず、ご神体をもとに返すよう指令が出された。
一方、この夫婦が「持ち帰り」事件で罰せられた様子はなく、「今後、患者の看護に注意すること」で済んだようである。

当時の瘋癲人の扱いや、信心深い人々の様子が伝わってくる資料である。
やはり、一次的な資料に触れるのが、精神医療史研究のおもしろさだと再認識した。

| 資料解題 | 12:19 | comments(0) | - | pookmark |
スポンサーサイト
| - | 12:19 | - | - | pookmark |
コメント
コメントする









SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS
PROFILE