近代日本精神医療史研究会

Society for Research on the History of Psychiatry in Modern Japan
Geelで開催中の「アウト & イン」サイダー・アート展"Identities TOO"

アウトサイダー・アート関連の記事をもうひとつ。
偶然だが、ゲントの国際シンポジウムの次の日に、ゲールで3つの会場を使ってアウトサイダー・アート展が始まった。
せっかくベルギーに来たのだから、行かない手はない。
ブリュッセル中央駅から列車に乗る。
アントワープ経由でヘーレンタールスへ。
そこで友人のBさんと待ち合わせ。
車で一緒にゲールへ。


(一つ目の会場 de Halle)

まずは、ゲールのマーケット・プレイスにある de Halle へ。
これは市の文化施設である。
入り口でパンフレットをもらったところ、3会場をめぐるスタンプ・ラリーになっていた。
3つスタンプを押したら、展示カタログが割引になるという。
展覧会の名前は Identities TOO である。
2007年にゲールで Identities I が行われたので、"TOO"なのだそうだ。
また、パンフレットの説明によれば、「ベルギーの国内外のアウトサイダーおよびインサイダーによる作品(het werk van Belgische en internationale in- en outsiderkunstnaars)」とあり、いわゆる「患者」の作品だけではない。
まあ、ボーダーレスの展覧会ということだ。


(de Halle の作品のひとつ)

上の作品は、見ず知らずの2人の作家がある日に出会い、その日にお互いの顔を描きあったものだという。
作品の端には書かれた時刻が記録されている。


(二つ目の会場 Sint-Dimpna en Gasthuismuseum)

二つ目の会場は、聖ディンプナ病院博物館である。
ゲールの昔の生活文化やここにあった病院に関する展示を行っているが、Identities TOO の展示の一環として、普段の展示物に混じってモダン・アートが置かれている。


(Sint-Dimpna en Gasthuismuseum 内に展示されているビデオアートのひとつ)

Messieurs Delmotte なる作家によるいくつかのビデオアートが目を惹いた。
上の写真は、瓦礫の山の上に立つ人物が、瓦礫を拾っては下に投げ、また投げ、、、と、ただ繰り返す、というもの。
思わずニヤリとしてしまう作品である。


(三つ目の会場 Pas 206)

三つ目の会場は Pas 206 とあるが、これは「Pas通り」の206番地の意味で、OPZ Geel (ゲール公立精神医学ケア・センター)の敷地内に立っている建物である。
ついこの3月に訪れたばかりの場所である(詳しくは、このblogのここを参照)。


(Pas 206 内の展示のひとつ)

上に示した作品はとても小さい。
私の指と比べてほしい。
この作家は、ブリュッセルでごみを拾って、それを作品の素材に使っているという。
好んで薄汚れた紙を見つけては、そこに顔を描いているのである。


(Pas 206 内の展示のひとつ。キュレーターのセンスが物を言う。)

三つの会場を訪れて知ったことは、このような展示を企画・運営する優れたキュレーターの存在である。
どんなにすばらしい作品であっても、それを生かすも殺すも、キュレーターの腕次第。
ブリュッセルにいるという、そのキュレーターに会って話を聞いてみたいものだ。

| 挑戦的萌芽研究 | 01:00 | comments(0) | - | pookmark |
"ON THE MAP Exploring European Outsider Art: A NOTEBOOK"


(国際シンポジウム"Outsiders on the Map"にあわせて出された本)

ゲントの国際シンポジウムの続きの話である。
会場で売られていた上の本を読めば、今回のシンポジウムのタイトル"Outsiders on the Map"の意味がわかる仕組みになっている。

Maria Bach の巻頭言"On the Map"によれば、この本は"Outsider Art Past Forward"という2年間プロジェクトの成果である。
これは2010年にEUの文化プログラムから資金援助を受けている。
背景には、ヨーロッパ各国の関係機関・関係者が連携・協力して、アウトサイダー・アート活動を活性化させようという意図がある。
そのイニシアティブをとったのが、上記の Maria Bach が帰属しているデンマークの GAIA Museum Outsider Art である。
2008年、この場所にヨーロッパ各国の関係者が集まって国際会議が開かれた。
翌2009年には European Outsider Art Association (EOA) が組織され、その第1回目の会議がゲントの Museum Dr. Guislain で行われた、というわけである。

この本の表紙の裏にはヨーロッパの地図が折り込んであり、その地図上に60箇所あまりの数字入りのマルが打たれている。
アウトサイダー・アートを展示している博物館、美術館、ギャラリーを示す。
分布は、オーストリア、ベルギー、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトヴィア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、セルビア、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリスと広がっている(入力も大変である)。


(フィンランドの ITE Contemporary Folk Art Museum の紹介ページ)

地図上に示された60箇所あまりのうち、60が"Good Practice"として詳しく紹介されている。
上のフィンランドのITEのページに見るように、右側のページには説明が、左側のページはnotebookとして自由に書き込めるようになっている。

これをひとつひとつここで紹介することはできないが、とくに気になったのが、同じくフィンランドの The Parikkala Sculpture Park である。
Veijo Rönkkönen (1944–2010) の彫刻作品が展示されているようだが、とにかく人を圧倒するものがある。
以下は、ゲントの国際シンポジウムの会場で配布されていた The Parikkala Sculpture Park のパンフだが、よくわからないと思うので、その下にwebpageも掲げておきたい。




The Parikkala Sculpture Park のホームページは;
http://www.patsaspuisto.net/english.htm

| 挑戦的萌芽研究 | 12:21 | comments(0) | - | pookmark |
国際シンポジウム "Outsiders on the Map"の報告


(国際シンポジウムの会場 Museum Dr. Guislain)

先月に訪れたばかりのゲントのギスラン博物館(Museum Dr. Guislain)へ再び。
記事のタイトルにあるように、アウトサイダー・アートの国際シンポジウムである。

受付で参加費75ユーロを払ったあと、コーヒーを飲みながら渡された資料に目を通す。
やがてゲールの友人Bさんが同僚のRさんとやってきた。
参加者は200人あまり。
私以外はすべて欧州の国々の人たち。
主催者の開会のあいさつで、「多くの国々からの参加者があります。イギリス、ドイツ、フランス・・・そして日本からも」とは、私のことである。


(英語版プログラム)

学術的な講演というよりも、ヨーロッパ各地で行われている優れたアウトサイダー・アートの実践を紹介するのが会の主旨である。
絵や彫刻の作品が話題の中心なので、PowerPoint、Youtube、Websiteなど、それぞれにふさわしい発表媒体が使われる。
会場はアート好きの雰囲気で包まれていて、自分にとってはとてもいい居心地。


(フランスのabcdのプレゼンテーション)

フランスのアール・ブリュットの団体 abcd [art brut connaissance & diffusion]による発表では、兵庫県立美術館で開催された「解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー チェコ、アール・ブリュットの巨匠」展への言及があった。
このプレゼンだけを聞くと、日本でもアウトサイダー・アートへの関心は高そうに思えるが、実際はそうでもないだろう。
精神医療へのポジティブなpublic attentionを、アウトサイダー・アートを通して深めていくという文化は日本にはないのか。
「精神障害者の人権を」などという、旧態依然とした社会改革的スローガンだけが空しく響いている(ような気がする)。


(Museum Dr. Guislainの特別展示場が、立ち食い・立ち飲み会場になっていた。)

会が終わって、Drinkタイムになった。
オリーブをつまんで、ワインを飲みながら、ロッテルダムから来たという女性の人と話を。
アウトサイダー・アートのバイヤーだという。
作家の知名度によるが、高額では300〜400ユーロで売れるという。
日本にアウトサイダー・アートの市場があるのかという話になった。
あったとしても、小さいマーケットしかないのでないか、としか答えられない。
よく知らないので。


(ゲントの中心街。虹を撮ったが、写ってないようだ。)

きのう日本から来たばかりなので、そろそろ疲労もピーク。
ホテルへ戻ろうとしたら、途中で雷雨、そして雹まで降ってきた。
変わりやすい天気である。

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